来年度の都立高校入試出題削減について

受験勉強

先日、東京都より、来年度の都立高校入試の出題範囲の削減内容についての発表がありました。この発表を受けて、みなさんはどのような感想を持ちましたか。教育関係に携わる業界にとって、非常に大きな発表であったと思います。個人的に、かなり問題視されるべき事項であると考えております。休校期間が約3ヶ月あったこともあり、削減は仕方ないことであるとは思います。ですが…。私が強くお話ししたいことは後半部にありますので、ぜひお読みいただければと思っております。

 

 

出題範囲の削減内容

以下の内容が今回削減された単元となります。

英語:関係代名詞that who which(主格・目的格制限的用法)
数学:三平方の定理・標本調査
国語:中3の教科書で学習する漢字
理科:第1分野「運動とエネルギー」の「力学的エネルギー」、「科学技術と人間」
第2分野「地球と宇宙」の「太陽系と恒星」、「自然と人間」
社会:公民的分野のうち「私たちと経済」の「国民の生活と政府の役割」、        「私たちと国際社会の諸問題」

いかがでしょうか。大分削減された印象です。

「こんなに削減されるなんてラッキー」と思った方もいるかもしれません。しかしその考え方はあまりにも短絡的です。今回の削減で多くの問題点が浮上したと思っています。

 

問題点と思われがちなこと

過去問が存在しない」、これは困ったことかなとは思います。

入試傾向をとらえるには、過去問を解くのが一番効果的です。

私のこれまでの指導の中でも、過去問を重視しなかった年はありません。

特に入試直前の時期に、大量の過去問を解いて得点力をアップした生徒が数多くいました。

しかし今年度の入試対策において、過去問は使いにくいです。

今までの入試問題を見てみると、英語では長文の問題の中に関係代名詞がたくさん含まれていますし、数学では三平方の定理を使わなければ解くことのできない問題が存在します。

今年度の入試にはそれらの単元が含まれないので、今までと違った問題となるわけです。

※出題傾向を見る上では、過去問は有効です。全く使えないわけではありませんので。

ではどのように対策を行っていけばよいのか?一見とても困り果ててしまいそうな問題かと思われますが、一言で言うと、何とでもなります!

単純に考えて、英語で言えば関係代名詞前までの単元を対策すればいいだけですし、同様に数学は三平方の定理前までの問題を解いていけばよいだけです。

過去問ではないですが、塾に行けば「模試の過去問」がストックされています(全ての塾がそうとは限りませんが)。英語で言えば、関係代名詞が範囲に入っていない模試もあります。そういった過去模試を解けば入試問題形式で問題演習を行うことができます。他の教科も同様のことが言えます(塾の役割は大きいですね)。

他にもいろいろと手を尽くせば対策はいかようにもなると思います。受験生のみなさんは目の前の勉強を淡々とこなしていく、きちんと受験勉強に取り組んでいくことを実践していけばよいのです。

根本的な問題点はこのことではありません。次の項目でお話ししていきたいと思います。

 

学力低下と地域格差

さてここからが今回の本題です。

学力低下地域格差、今回の削減問題の本質はココにあると私は思っております。

学力低下問題

今回削減された範囲は、今後の学習を考えると、かなり重要な単元と考えられます。

例えば英語を例にとって考えてみます。

関係代名詞ですが、英文読解において、かなり重要な位置を占めてくる文法です。

学校でも塾でもたくさん勉強し、受験勉強でも何度も取り上げられる箇所です。

例年の受験生はかなり特訓します。その結果、多くの受験生は関係代名詞をきちんと理解し、関係代名詞を含む読解などできるようになります。

今年度は入試には出題されませんが、学校の授業では扱うとされています。しかし極論、紹介程度の内容で終わってしまうと私は見ています。

関係代名詞は高校でも頻繁に出てきますし、関係副詞、複合関係詞など、さらに発展的な内容も学習することになります。

ですので受験レベルでの学習をせずに高校へ進学すると、高校での学習から大学入試にいたるまで、かなりの支障をきたすことにつながります

他の教科でも同様のことが言えます。三平方の定理を特訓せずに高校数学に臨む、かなり危険です。中3の漢字をろくに勉強しない、高校での現代文読解にかなりの影響が出てしまうでしょう。

まとめますと、今年度の都立入試のことだけ考えて受験勉強していると、高校での勉強や大学入試など、今後の学習に大きな支障をきたしてしまうということです。

 

地域格差問題

上記の出題範囲の削減は、あくまで東京都の話です。

他の道府県は削減内容が異なる場合もありますし、そもそも削減しないと明言している県もあります。

つまり今年度の高校入試は地域によって出題範囲の格差が生じることになります。

同じ国の人間であるにもかかわらず、学力の地域格差が生まれることになる、これは大問題です。

この学力格差は3年後の大学入試に間違いなく影響を及ぼしてくると私は見ています。

付け加えると、都立入試は他の道府県に比べて問題レベルがかなり低いです。そんな中、さらに出題範囲まで削減されてしまうと、都立生は3年後の大学入試において、かなりの学力ハンデを背負うことになります。

しかし国や自治体に文句を言ったところで、そう簡単に変わるものではありません。現実的に考えて、この発表をもとに、学習塾は動いていかなければなりません。そのあたりのことを踏まえて、次の項目で述べていきます。

 

入試出題範囲削減を受けての対応策

結論から申し上げます。

出題範囲が削減されても、例年通りの中3範囲をしっかり勉強していく。これしかないと思っています。

多くの学習塾がそのような対応をとっていくのではないでしょうか。関係代名詞も三平方の定理も入試レベルでガッツリ勉強していくことでしょう。

私の塾でも間違いなくそうします。

受験生はせっかく範囲が削減されたのに、なんで勉強しなければならないの?と言ってくるかもしれません。

ですが上記で述べたとおり、今後のことを考えると、かなり心配です。特に大学受験を考えている生徒はなおさらです。

大学入試は当然のことながら、日本全国の受験生との戦いです。いくら高校受験において格差が生じていても、全く考慮されないでしょう。

この事実を子どもたちにもしっかり伝えていき、納得してもらうことが大切です。今後困るのは子どもたちなのですから。

 

まとめ

以上述べてきたとおり、今回の出題範囲の削減は大きな問題と考えられます。

都立志望の生徒さんは、今後のことを踏まえて、受験勉強に取り組むべきであると思います。

東京都は授業料の補助、トップ附属校(早稲田・慶応・明治・中央など)への人気もあり、私立志向が強いです。今後も私立校の人気は上がっていくと思われます。大学入試のことを考慮に入れるなら、私立高校進学も視野に入れて考えていく必要があるかもしれません。

高校選びもより慎重に考えた方が良いです。

ここまで休校期間が長引いてしまったので、出題範囲の削減は仕方のないことではあると思います。学校の先生もカリキュラムをどのようにしてこなしていくか、頭を悩ましていることと思います。

ですので学習塾の役割はさらに大きくなると思っています。

学校でカバーしきれないところを、塾ではしっかり勉強していくことになります。

塾に通えない子どもたちは、この事実をきちんと理解してもらい、例年の受験生と同じような勉強を実践していって欲しいと思います。

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